『
和
服
の
好
き
な
外
人
さ
ん
』
折
よ
く
、
雑
誌
社
か
ら
日
本
の
生
活
、
文
化
を
記
事
に
す
る
特
派
員
の
仕
事
が
舞
い
込
む
。
1
8
9
0
年
の
春
、
横
浜
へ
。
地
中
海
か
ら
の
旅
は
、
地
球
半
周
を
ゆ
う
に
超
え
て
い
た
。
と
こ
ろ
が
、
挿
絵
画
家
よ
り
低
い
報
酬
に
腹
を
立
て
、
契
約
を
破
棄
し
て
し
ま
う
。
さ
あ
、
ど
う
す
る
。
旧
知
の
言
語
学
者
が
救
い
の
神
と
な
る
。
彼
は
、
近
代
国
家
を
急
ぐ
日
本
が
、
欧
米
か
ら
迎
え
た
“
お
雇
い
外
国
人
”。
医
学
の
ベ
ル
ツ
、
動
物
学
の
モ
ー
ス
、
地
質
学
の
ナ
ウ
マ
ン
ら
一
流
学
識
者
の
一
人
だ
。
月
俸
は
平
均
3
0
0
円
で
、
大
臣
よ
り
も
高
い
。
文
部
省
へ
の
口
利
き
も
あ
り
、
運
よ
く
松
江
中
学
の
英
語
教
師
と
な
る
。
月
俸
1
0
0
円
は
知
事
と
同
額
。“
押
し
か
け
外
国
人
”
は
、
国
の
お
客
様
と
な
っ
た
。
そ
の
後
、
熊
本
の
第
五
高
校
、
さ
ら
に
東
京
帝
大
に
迎
え
ら
れ
る
。
月
俸
も
2
0
0
円
、
4
0
0
円
と
倍
増
。
さ
す
ら
い
の
記
者
は
、
な
ん
と
最
高
学
府
の
教
壇
に
立
つ
。
帝
大
で
は
、
流
れ
る
よ
う
な
詩
的
英
語
と
分
か
り
や
す
さ
で
人
気
を
博
し
た
。
後
任
が
漱
石
。
後
の
文
豪
も
、
英
文
学
の
レ
ベ
ル
の
高
さ
に
脱
帽
し
た
と
述
懐
す
る
。
松
江
行
き
は
偶
然
だ
っ
た
。
古
代
の
神
々
の
聖
地
で
あ
り
、
暮
ら
し
の
中
に
信
仰
が
息
づ
く
出
雲
に
魅
せ
ら
れ
た
。
八
雲
の
名
も
、
出
雲
に
ま
つ
わ
る
古
歌
に
由
来
す
る
。
古
代
ギ
リ
シ
ャ
の
多
神
教
や
、
妖
精
伝
説
や
神
話
に
彩
ら
れ
る
ケ
ル
ト
文
化
に
親
し
み
を
持
つ
八
雲
に
と
っ
て
、
夏
の
あ
る
夜
、
八
雲
の
「
怪
談
」
を
読
ん
だ
。
子
供
へ
の
愛
情
を
残
し
、
悲
し
げ
に
消
え
去
る
「
雪
女
」。
経 き
ょ
う
も
ん
文
を
書
き
忘
れ
、
平
家
の
怨
霊
に
耳
を
そ
が
れ
る
「
耳
な
し
芳
一
」。
顔
を
ひ
と
な
で
す
る
と
、
の
っ
ぺ
ら
ぼ
う
に
な
る
「
む
じ
な
」。
民
話
や
伝
承
を
も
と
に
、
豊
か
な
想
像
力
と
人
間
観
を
お
り
こ
ん
だ
作
品
。
小
泉
八
雲
こ
と
、
ラ
フ
カ
デ
ィ
オ
・
ハ
ー
ン
は
、
1
8
5
0
年
ア
イ
ル
ラ
ン
ド
人
の
父
と
ギ
リ
シ
ャ
人
の
母
と
の
間
に
生
ま
れ
た
。
陽
光
の
土
地
に
育
っ
た
母
は
、
寒
冷
な
気
候
に
耐
え
き
れ
ず
母
国
へ
戻
っ
て
し
ま
う
。
父
は
す
ぐ
再
婚
。
親
に
捨
て
ら
れ
た
喪
失
感
は
大
き
く
、
八
雲
の
人
生
に
濃
い
影
を
落
と
す
。
父
方
の
大
叔
母
に
預
け
ら
れ
る
が
、
厳
格
な
カ
ト
リ
ッ
ク
に
息
が
つ
ま
る
。
だ
が
大
叔
母
も
事
業
に
つ
ま
づ
き
破
産
。
孤
児
同
然
に
社
会
の
荒
波
に
投
げ
出
さ
れ
る
。
八
雲
は
終
生
、
キ
リ
ス
ト
教
に
な
じ
め
な
か
っ
た
。
過
去
を
ふ
り
捨
て
る
よ
う
に
ア
メ
リ
カ
へ
。
行
商
や
ホ
テ
ル
ボ
ー
イ
で
食
い
つ
な
ぐ
。
読
書
家
で
文
章
力
も
磨
い
て
い
た
八
雲
は
、
や
が
て
新
聞
記
者
と
し
て
健
筆
を
ふ
る
う
。
ア
メ
リ
カ
は
南
北
戦
争
が
終
わ
り
、
日
本
に
目
を
向
け
る
。
八
雲
も
日
本
旅
行
記
を
読
み
、
関
心
を
深
め
る
。
日
本
は
理
想
郷
だ
っ
た
。
古
事
記
や
説
話
に
通
じ
た
、
妻
セ
ツ
と
の
出
会
い
も
あ
り
、
日
本
文
化
に
傾
倒
し
た
。
和
服
を
着
て
、
刺
身
を
好
む
外
人
さ
ん
は
、
深
く
日
本
を
愛
し
た
。
旅
の
途
中
、
盆
踊
り
を
見
た
。
太
鼓
も
手
つ
き
も
リ
ズ
ム
も
、
西
洋
音
楽
と
全
く
違
う
。
単
調
に
も
見
え
る
踊
り
に
引
き
寄
せ
ら
れ
る
。
生
者
が
死
者
を
迎
え
共
に
舞
う
輪
の
中
に
、
心
も
身
体
も
す
べ
り
込
ん
で
い
く
。
八
雲
は
生
と
死
が
響
き
あ
う
霊
的
な
も
の
を
感
じ
て
い
た
。
霊
的
な
も
の
が
あ
る
か
ら
こ
そ
、
童
話
や
昔
話
、
そ
こ
に
住
む
妖
精
、
妖
怪
に
感
応
し
、
想
像
の
翼
が
広
が
る
。
目
に
は
見
え
な
い
も
の
へ
の
感
受
性
が
怪
談
を
生
ん
だ
。
八
雲
は
帝
大
で
、
「
霊
的
な
も
の
へ
の
感
覚
を
持
た
な
い
人
間
が
、
な
に
か
に
生
命
を
吹
き
込
む
こ
と
な
ど
で
き
る
は
ず
も
な
い
」
と
講
義
す
る
。
八
雲
は
、
合
理
性
と
効
率
性
を
優
先
す
る
西
洋
文
明
と
距
離
を
置
い
た
。
世
の
中
に
は
、
知
性
や
理
性
で
解
明
で
き
な
い
も
の
が
あ
る
。
本
当
の
こ
と
は
、
心
の
目
が
な
い
と
見
え
ず
、
論
理
的
に
語
れ
な
い
こ
と
を
心
得
て
い
た
。
近
代
化
に
懐
疑
的
な
分
、
心
は
開
か
れ
て
い
た
。
理
性
が
ま
さ
り
過
ぎ
な
い
よ
う
五
感
を
解
き
放
つ
。
弱
者
へ
温
か
い
眼
差
し
を
持
つ
。
生
き
と
し
生
け
る
も
の
へ
共
感
す
る
。
八
雲
に
は
、
異
な
る
文
化
を
受
け
入
れ
る
柔
ら
か
さ
と
、
国
や
民
族
の
違
い
を
超
え
、
共
に
生
き
よ
う
と
す
る
視
点
が
あ
っ
た
。
市長の手控え帖
広報しらかわ 2017.9(H29)